残暑とは無縁のような過ごしやすい9月が終わったかと思うと、今年の10月はとても朝晩の冷えが厳しいですね。それでも昼間はそこそこ暑いので朝何を着ていくか皆さん悩まれていることかと思います。

漢方では1年の季節を四季ではなく5つないし6つに分割して考えることがあります。そして6分割の場合、「暑い季節」と「寒い季節」はそれぞれ2つに分けて考えます。

ふたつの暑い季節

ゴールデンウィーク前後は例年とても暑く感じますが、この4~5月頃の暑さは主に直射日光によるものです。空気自体はそんなに暑い訳ではないのですが日差しが非常に強く、日光に当たると非常に暑く感じます。ですので曇ったり日陰に入ったり日が沈んだりすると急に寒くなります。暖房器具で言えば電気ストーブのようなものです。

一方、6~8月頃の暑さというのは「こもった熱」の暑さです。強い日差しの熱エネルギーが地面や海水に吸収され地面や海が暖かくなります。一度温まった地面や海はすぐには冷めませんので、昼も夜も暑いままですし、地面や海水からの蒸し上がりがあるためムシムシします。暖房器具で言えばさしずめこたつでしょうか。

ふたつの寒い季節

寒さを感じ始めるのはこの10月ぐらいからですが、10~11月の寒さは「上からくる寒さ」です。乾燥した冷たい空気が吹き込んでくるため上気道の感染症が流行り始めます。まだ日差しの強さは残っているため昼間は暑く感じることが多いのは4~5月頃と同じですが、体が暑い時期に順応していたので4~5月と同じような気温・湿度でもとても寒く感じます。

12~1月の寒さはいわゆる「底冷え」です。日照が弱まり海も地面も冷え切るため、湿気と寒さが結びついて足下から冷え上がってきます。カゼのひきかたも10~11月頃と違い足下の冷えからくる膀胱炎や喉がイガイガ感じる炎症などの症状が主流になってきます。

上からくる寒さと家庭でできる養生法

今の時期の冷えの特徴は「乾燥していて上から降ってくる」ことです。さしずめクーラーといったところです。漢方では肺というのはとても乾燥を嫌う器官として定義されていて、この時期に肺が外気の乾燥に打ち負けることで上気道感染症を起こすと考えられています。また、肺は呼吸のために伸び縮みする器官ですので冷えて固まることも嫌がります。

家庭でできる養生法としては乾燥を避けるためのマスク・加湿器・のどスプレー等の利用、ノド~首回りの冷えを避けるためのタートルネック・マフラやストールの着用、肺をうるおす作用があるとされる秋の果物(梨・柿・イチジク・アンズ・ビワなど)を適度に摂るなどがあります。

鍼灸治療でもこの時期はカゼをひかないように肺に関連するツボは念入りに手当をするようにしています。家庭で出来るツボ療法としては、肺の働きを助けるために「肺兪(はいゆ)」という背中の肺のツボに温灸をすることおすすめしますが、背中なので他の人に頼まなくてはなりません。一人でできる手軽なやり方としては、お灸の代用としてドライヤーの熱風を肺兪の周辺に当てるやり方があります。朝、髪をセットするついでに2~30秒ほど温めてみてください。