薬味シリーズ3回目、今回はショウガです。

生のショウガと乾燥させたショウガの使い分けについては以前にも書きましたが(夏のショウガ・冬のショウガ)、薬効について改めてご紹介します。

生のショウガ

生のショウガは生薬の世界では生姜(ショウキョウ)と呼ばれます。生のショウガの特徴は消化器(特に胃)を温めることと、発汗作用によって体にこもった熱を逃す作用があることです。

生のショウガを薬味として使う時に最も期待されるのは胃を温める働きです。

漢方では胃を冷やすことを強く戒めています。胃を冷やすことで、消化不良・胃痛・胸焼け・嘔吐・下痢・ゲップといった消化器症状のみならず、しゃっくり・頭痛・鼻炎・目のかゆみ・のどの痛みといった顔面部〜のどにかけての症状も引き起こすとされています。さらに、胃を冷やして消化吸収がきちんと働かないことで二次的に体の機能を低下させ、結果として様々な病を呼び込む原因になるともされています。

夏場は冷たいものや水分を多く摂取してしまうので胃を冷やして消化器の働きを低下させがちですが、胃の冷えを解消してくれる作用がありますので、夏場は積極的に摂取したい薬味の代表格です。(摂りすぎは良くないですが)

また、世間ではショウガは体を温めると思われていますが、発汗により体表面近くの熱を外へ放出させてしまう作用がありますので、体を温めたい冬よりも体にこもった熱を逃したい夏向けの薬味です。

しかし、冬にも生のショウガを使う場ケースがあります。風邪の時です。漢方での風邪の治し方の代表格は「汗をかかせること」です。漢方の風邪薬には発汗作用を期待して生姜が多く使われています。生姜は風邪に対する「攻め」の生薬という位置づけに置かれています。ただし、発汗することは体力を多く消耗させますでの、こじれて長引いた風邪の場合には控えた方がいいでしょう。

乾燥ショウガ

乾燥ショウガは乾姜(カンキョウ)と呼ばれます。ショウガは乾燥させると中の成分が化学変化を起こし、生薬としての性質が変わります。とはいえスライスして天日干しにすると風味はいいのですが手間がかかります。とにかく水分を飛ばせばいいので、多少風味は落ちますが電子レンジを使うと手っ取り早いです。(私はいつも電子レンジでやります)

乾姜は辛みが強くなりお腹をあたためる作用が強くなる一方で、発汗作用は弱くなります。ですので、体の冷えに対して強い効果を発揮しますが、発汗作用が弱いため体に熱がこもっている時(風邪の時や夏場など)にはあまり向かないです。

また、体の過剰な水分を熱で消化する働きも持っています。水気の多い痰や胃の水の滞りに効果を発揮する一方、肺に熱がこもって上気道〜気管の炎症をおこしている時や腸に潤いがなくて便秘をしているときには禁忌となります。

この説明だと生のショウガよりやや使い方が難しいように感じますが、度をこさなければ風邪をひいている時と便秘の時以外なら大体使えると思って頂ければいいかと思います。

実際の使い方としては、乾燥させたものを紅茶などに入れて飲むか、粉末にしてジンジャーパウダーとして利用することになりますので、生のショウガほど料理の際の出番は多くありません。冬場にショウガを使いたい料理というと餡かけに混ぜたりスープに使うことが多いかと思いますが、餡かけにジンジャーパウダーではちょっと寂しいですね。

こういった場合は裏技として、切ってから時間が経ち古くなったショウガを使う方法があります。古いショウガは非常に辛味が強いですが、あの強い辛味こそが乾姜の有効成分の風味です。もし冷蔵庫の奥に忘れ去られたショウガのひとかけらを見つけたら、是非捨てずに活用してみてください。