本日は冷え性についての解説です。書いている最中の外気温が35℃を超えてるのに冷え性について書くのもどうかとも思ったのですが、夏は夏で冷えたりもするのです。

冷え性というのは冷感を持続的かつ過度に感じることをいいます。これは冷えを感じる部分に体温が行き届いていないということから起きています。

その理由についてはいくつか考えられますが、いずれの理由についても共通する原則として「体温は内臓で作られて、血液に乗って全身に運ばれる」ということがあります。熱を作るための基礎代謝として筋肉量が注目されがちですが、運動していない時の筋肉はあまり熱を作らないためボディビルダー級の肉体でもない限りは肝臓や腎臓・消化器が作る熱量の方が多いです。それらの器官に温められた血液が血管を通じて全身に熱を配ります。

冷えを感じるのに、「全身が寒い」という場合と「手足(特に指先)が寒い」、あるいは「足だけが寒い」という3つのパターンがあります。

全身が寒い

全身が寒いという場合は熱の生産量そのものが足りていません。そのため、冬場だけでなく年中寒いという方が多いです。薬では体温を上げるタイプの生薬がよく用いられますし、鍼灸では主に灸を用いて熱産生の多い臓器(特に腎臓)の働きを助けます。

手足の指先が寒い

次に手足が寒いという場合ですが、手足の先は毛細血管が多く、かつ心臓から遠いため血を押し出す力がとても弱くなる場所です。こういった所で手足の毛細血管が縮こまってしまったり、あるいは血流が悪くなってしまって古い血を押し出せなくなると、新しい血が毛細血管までいきわたらなくなり、結果毛細血管の多い場所(指先です)には熱が届かなくなってしまいます
毛細血管の縮みやすい冬に起こすことが多いですが、人によっては年中という方もおられます。毛細血管の開きの悪さを是正したり、あるいは血流を邪魔している何かしらの滞りを取り除いたりといった手当を行います。

足だけが冷える

最後に足だけが冷えるという場合です。これは2タイプに分かれまして、一つは足首まで冷える方、もう一つは足の裏が冷える方です。

足首まで冷えてむくむ

足首まで冷える人の方は、足の浮腫みとセットで起こされるかたがほとんどです。冷房等で夏も冷えることはありますが、原則的には冬の冷えによって引き起こされるものです。地面から来る冷えによって足が冷えて毛細血管が縮まることに加え、足は心臓から最も遠く、心臓が血を押し出す時の圧力が届きにくいため、他の部位に比べて新しい血の供給を受けづらくなります。血=水分の供給を受けられない細胞は自分だけでも助かろうと水分を細胞内に多く蓄えてしまい、結果むくみが発生してより血管が圧迫されるという悪循環を生じます。
薬では水分代謝を改善する生薬を用いますが、鍼灸では滞ったむくみと冷えの影響の除去によって毛細血管の開きを改善する処置を行います。

足の裏に汗をかいて冷える

一方、足の裏が冷える方はいわゆる脂足で、足の裏がいつも汗でペトペトしています。あるいは、ちょっとした緊張で手のひらと足の裏にワッと汗をかく方もおられます。

このタイプは他の冷え性と冷え方が異なり、汗の気化熱で足の裏が冷やされます。手の汗は拭くことができるのでそこまで冷えませんが、足はなかなか拭えないため足の裏だけが非常に冷えます。

こちらは消化器が元々弱い・あるいは暴飲暴食で消化器を弱らせていていつも足の裏がジットリとしているタイプと、緊張すると手のひらと足の裏に汗をワッとかくタイプがあります。前者は消化器の弱りを手当することになりますし、後者は交感神経の過敏な反応を抑えることを考えます。

また、かいた汗が靴下を湿らせることで足を冷やしてしまいますので、乾きにくい素材の靴下はあまりおすすめできません。特に綿は非常に保水力が高い上に乾きにくい性質をもっていますので避けた方がいいでしょう。おススメはウール・絹・アクリル・あるいは登山用に使われる高機能の化繊などの吸湿性と放湿性の両方に優れた素材です。あるいは一日に何度も履き替えられるなら、綿の靴下を頻繁に履き替えるのもいいでしょう。