私が花粉症になったのは20年ぐらい前ですが、当時は花粉症患者まだ10人に一人かそれ以下の数字でした。最近では4人に一人とか言われているそうですね。
なんでこんなに増えたのか。戦後に杉を大量に植えたからとかアスファルト舗装が増えて花粉が地面に吸着されずいつまでも空気中を舞っているからとか色々言われていますが、今日は漢方の視点から考察したいと思います。
目・鼻・ノドの症状について
花粉症の症状を引き起こしているのは目・鼻・ノドの粘膜のアレルギー性炎症です。漢方ではこれらの部位は共通して消化管(特に胃)のコンディションの悪化時に反応が出る部位とされます。
※ 一部の漢方系のサイトで「春は肝臓の季節なので花粉症は肝臓が関連する」と書かれたりしています。肝臓も発症メカニズムにおいて重要な役割を持っているとは思うのですが、発症部位から直接的には肝臓ではなく消化管の影響によるものと考えるべきです。
また、炎症が起こるということはそこに熱がこもっていると考えます。つまり、腹部で発生した熱が胃の「経絡」(血や水や神経等の通り道のようなものと考えてください)を通って上昇し、鼻の奥のあたりにこもることで鼻粘膜や目の粘膜を炎症させている、と考えるのが漢方的な解釈となります。
腹部の熱の原因
春の花粉症患者が増え続けているということは、春の時期に腹部に熱を持つ人が増えているということです。ではなぜ春に腹部に熱が発生するのでしょう?
それは冬の生活に大きく関連します。漢方の古典医学書には冬場の生活について次のように述べています。
「冬は家にこもって早く寝て遅く起きなさい。汗をかいたり外で風邪に当たったりするようなことはせず、大きな感情の起伏も起こさないようにおとなしく生活しなさい。」
漢方では冬場は秋に蓄えた栄養を春まで温存するように生活しなさいと説いています。なので、むやみに夜中に起きたり、運動したり、熱いモノを食べて汗をかいたり、笑ったり怒ったりしてエネルギーを発散することは控えなさいとしているのです。
※ 人間が農耕を営んで栄養状態が向上したのはほんの最近数千年のことで、人体はそれ以前の栄養状態の安定しない環境を想定した設計になっていると私は考えています。漢方医学書(黄帝内経)の記述に関しては無茶なようですが、冬場というのは本来は蓄えて消費しないようなバイオリズムを持っていると私は解釈しています。動物の毛が生え替わるように、人体にも季節に応じた機能的な変化があるということです。
これに反すると、せっかく秋に体に蓄えていた陰性の貯蔵物を消費します。そうなると、春になって活発に運動するために体の陽気量が上昇したときに体内の陰性物が不足し、結果陰陽のバランスが大きく陽へ傾いて体のあちこちで熱に由来する症状を引き起こす。これが「春の病」といわれるものです。
具体的な病状としては局所的な筋の萎縮、あるいは鼻の諸症状、あるいは急性熱病(インフルエンザ)が引き起こされると書かれていますが、これらは実際の臨床でも2月〜4月に増えることが多い症状です。
※ 局所的な筋の萎縮は熱と一見関係なさそうですが、春の活動時に必要になる大量の血液の原料となる陰性貯蔵物の不足によるもので、陰陽のバランスのくずれと密接に関連します。
以上から、漢方的に考えるなら、花粉症の増加は冬場の生活の現代化(生活の夜型化・鍋や辛味など冬の食生活の変化・ウィンタースポーツの普及等々)がそのまま冬の不摂生へと直結しているためだ、と考えることができます。
…とはいえ、「晩は18時に寝なさい」「鍋も熱燗もだめ」「冬は外出しちゃだめ」って言われてもそんな生活できないですよね(´。` )。