【2:内湿を避ける】

飲食篇 その1の続きです)

温補して気をふさがざる物は益あり。生冷にして瀉(はき)下し、気をふさぎ、腹はる物、辛くし(て)熱ある物、皆損あり。(p.66 身を養うに益あるものを選べ)

四時老幼ともに、あたたかなる物くらふべし。殊に夏月は伏陰内にあり。わかく盛なる人も、あたたかなる物くらふべし。生冷を食すべからず。滞やすく泄瀉しやすし。冷水多く飲むべからず。(p.79 暖かなものを飲食せよ)

内湿という概念は東洋医学のモノです。(日本の漢方では水毒という表現をしたりもします)消化管に水分が溜まると害になるという考え方ですが、水分摂取そのものよりも消化管を冷やすことの害を重点的に説いているように思います。たとえ冷蔵庫で冷やしてなくても常温の水というのは体温より10℃~20℃ぐらい低いのが常でありまして、口から入れれば当然ながら消化管を冷やし、その結果消化管の壁の筋肉のはたらきが悪くなります
これは飲料水という話だけでなく、水気の多い生野菜や果物にも言えることです。また、調理済みのものでも水気の多いモノを温めずにたべるというのはやはり害になります。
また、温度が下がることで胃酸中の消化酵素の働きも衰えますので、消化に時間がかかることになり、結果胃を疲弊させることにつながります。
さらに、消化管の冷えは下痢を誘発する原因ともなります。

瓜は風涼の日、及秋月清涼の日、食ふべからず。極暑の時食ふべし。(p.84 瓜を食べる時季)

瓜類はほぼ水分で構成されており、さらに利尿作用を持つカリウムが多く含まれています。益軒は『菜譜』という本でキュウリを「小毒あり」とまで言っておりますが、水分が多く尿によって体の熱を逃すことから腹を冷やすと考えたのでしょう。
有名な話としてごく最近まで中国では冷たい飲み物を飲む習慣がなかったという話がありますが、夏季の非常に暑く、体内に熱が溜まる時期を除いては瓜など水分の多い野菜・果実の生食や冷飲は害が多いため避けた方がよいという事です。

(なお、一般に東洋医学では生肉・生魚も消化管を冷やすとしているのですが、飲食篇の記述では扱いに隔たりがあります。これらは食中毒予防のための項目で解説します)

脾胃虚弱の人、老人などは、䭐(もち)・餈(だんご)・饅頭(まんじゅう)などの類、堅くして冷たる物くらふべからず。消化しがたし。つくりたる菓子、生菓子の類くらふこと斟酌すべし。おりにより、人によりて甚害あり。晩食の後、殊にいむべし。(p.77 虚弱の人は餅・団子を遠慮せよ)

粘り気の強い食べ物、というのは納豆や山芋ということではなく、砂糖を大量に使ったりデンプン質が多い煮物や菓子のことですが、これらも内湿を溜めるとしています。ただ、これらについては「芋類はホクホクのウチに食えばいい」、と書かれていたり「ボテボテとしたおかゆなんかでも弱っているときには害になる」と書かれていることから先に解説した消化の悪さの方にかかってくるのではないかなぁ?と個人的には思います

朝夕の食、塩味をくらふことすくなければ、のんどかはかず、湯茶を多くのまず。脾に湿を生ぜずして、胃気発生しやすし。(p.87 湯茶をしばしば飲むな)

なお、温かい水分であっても取り過ぎを諫める記載があります。水分を取ることで胃酸が薄まるからと考えられそうですが、胃酸の賛成は非常に高く一時的に薄まってもすぐにphは元通りになるという見解もあり、また胃での消化中であっても水分はどんどん腸へと流れていきますので温かい水分のために胃の中が満杯になるということもないという見解もあります。ですが、ご存知のように水分をガブガブ飲むとしばらくの腹がタプタプになり苦しくなるのは事実です。この辺りは現代医学的にどう解釈するか悩ましいですが、温度に関わらず水分の取り過ぎが消化を阻害するのは合っているかと思います。

<つづきます>