土用といえば鰻!というのは現代栄養学でも正しいとされています。他に豚肉もよく推奨されます。理由はビタミンB1が豊富だから。
夏場は冷えたジュースやアッサリしたそうめんなど、タンパク質や脂質を取らずに糖質過多な食生活になってしまうので、糖質をエネルギーに変える際に必要なビタミンB1が不足する、というのが現代医学的な見地から夏バテのしくみです。
ところがです。
江戸時代以前、漢方の世界で暑気払いに何を食べてたのか…土用の入りに食べる土用餅、旧暦六月(つまり一番暑い時期)に食べる水無月、土用の丑の日には「う」の付くうどん、うめぼし、瓜類。
なんと、吸収のいい糖質と、水分が豊富で利尿作用のある瓜、それと塩分の多いうめぼしなんですね。糖質と水分をとるというのは現代医学・現代栄養学と発想が真逆です。
漢方では甘味(つまり吸収のいい糖質)は消化器を元気にするとされます。また、瓜類は体にこもった熱をオシッコで排出して体を涼しくしてくれるといいます。
空調も冷蔵庫も無い時代ですから、暑い時期にどのように体温を下げることは大きなテーマだったのでしょう。
また、江戸中期のデータですが、主食に白米を食べる比率は50%程度だったということです。ですのでビタミンB1の摂取量はぬかの摂取や雑穀を食べることでクリアしていたのではないでしょうか。むしろ食欲の減退で食事量そのものが減ってしまうのが問題だったので、食欲がないときでも食べられる甘味やうどん、食欲を増進する梅干しが暑気払いに食べられたのでは無いかと推測します。