春の病の原因とその対策
東洋医学では肝臓は春(※2月初旬~5月初旬頃)の気候を嫌うとされていて、この時期はストレスを受けることから、肝臓の生理的な働きに起因する次のような症状を引き起こすといわれています。
- 頭部の症状(めまい・耳鳴り・頭痛・鼻づまり)
- 精神症状(イライラ・不眠)
- 筋肉・腱がひきつりやすくなる
東洋医学というのは一見不思議で、現代医学とは異なる価値観で物事を見ているように思われがちですが、実はこれらの症状が春に起こりやすいという事は、現代解剖・生理学的な観点から説明が可能です。今回はこの春の病というものを分析していきます。
春の病の原因は、冬の寒さ?
古医学書(黄帝内経)を紐解きますと、春の病の原因は冬場に外をウロウロと出歩いて寒い風に晒されたからだ、とされています。ここだけ見ると冬に運動はしてはいけないように読めてしまいますが(そしてそういう間違った養生を勧める人もいますが)それは違います。
この古医学書が書かれた時期は中国の後漢中期~後期頃と言われています。また、王朝の中心は現在の中国西北の内陸部であったことを考えれば、冬に外で動くのは結構寒かっただろうと思われます。
人は寒さを感じたときに体を守るために、体表の毛細血管を閉じて熱を体内に閉じ込めようとします。そうすると筋肉に血液が届きにくくなり、栄養を得られなくなった筋肉は固く縮こまってしまいます。
そうして体が縮こまった結果、筋肉と筋肉の間などで潤滑油のような役割をしているファシアという層(いわゆる「あぶらみ」です)から水分が追い出されて接着剤のように固まってしまい、組織同士を癒着させてしまいます。
癒着と血流障害がさまざまな症状を引き起こす
ファシアは関節付近に多いので、癒着が増えると関節の骨同士が接近してあそびがなくなり、関節の狭いスペースを通る血管を圧迫し始めます。(血管の圧迫の有無は脈診で手首に伝わってくる圧力の強さを比較したり、筋肉を触り比べて毛細血管まで血液が届いているかを確認することでわかります)。十分な血液を得られない手足の筋肉は引きつりやすくなります。
これが鼠径部と両肩とで起こると、行き場を失った血液は頭に強い圧力をかけることになります。
こうして耳の奥に圧力がかかれば平衡感覚や聴覚に異常が起こり、鼻や目ならアレルギー性の炎症を悪化させ、頭の表面なら緊張性頭痛、頭蓋内の血管なら片頭痛といった症状を引き起こします。
また、筋肉が癒着することから関節が伸び切らなくなるので、横になったときに肩・膝・腰が浮き上がってしまって脱力することができなくなります。そうすると寝ていても筋肉が緊張して交感神経を刺激してしまい、十分な休眠効果が得られず、精神症状へとつながっていくのです。
ではなぜ、これらの症状が春に出るのかというと、冬は寒いので運動量が少なく、血流の偏りによる症状が現れにくいからです。暖かくなって運動量が増え、全身が血液を要求するようになると、こういった症状が目立ってくるのです。
このように冬の寒さから全身のファシアを癒着させることが春の病の原因となります。
冬に溜まったファシアの癒着、どうすればいいの?
ファシアの癒着は軽微なものならマッサージやストレッチ、軽い体操などで解消されることもありますが、一定のレベルを超えるとセルフケアでは取れなくなってきます。
鍼治療はそういった癒着の処理に非常に向いております。春の病でお悩みの方は是非一度当院にご相談ください。