鍋が美味しい気候になってきました。院長は主夫でもありますので、今日も朝から鶏ガラで出汁をとっております。

寒い日に鍋と熱燗といえば天にも昇る組み合わせですが、貝原益軒の『養生訓』を読み直していますとこんな一節が目にとまりました。

酒は夏月も温なるべし。冷飲は脾胃をやぶる。冬月も熱飲すべからず。気を上せ、血液をへらす。

(夏は酒を温めてのみなさい。冷たいものをのむと消化器を冷やして病になります。冬に熱い酒を飲んではいけません。気が体の上の方へあつまり、血液をへらしてしまいます。)

…冬の熱燗はダメなんだそうです(´д`)

確かに漢方の理屈で考えると、冬場に熱燗というのはよろしくありません。冬はあまり活動的にならず、汗もかかないようにし、そとで冷たい風にあたることは避け、早く寝て遅く起きなさい、というのが漢方における冬の養生法の指針です。これは、春になって活発に動くためのエネルギーを冬の間に蓄えておくべきだという考え方に基づいています。これを「冬は精を蔵す」といいます。精は栄養分のこと、蔵は貯蔵の蔵です。

一方で、お酒は体のめぐりを良くして温める作用があります。そうすると、折角蓄えていたエネルギーを燃やして消費し始めてしまいます。血液をへらす、とは折角貯蔵していた栄養分を消耗してしまうことを指します。また、そうしてできた熱を体外へ発散してしまうと、熱が抜けて一時的に虚脱した体には冷えが入りやすくなってしまいます。

こういった理屈から、『養生訓』では冬場の熱燗を諫めているんです。でもあつ~い熱燗美味しいですよね…どうしてもぬる燗でなく熱燗が飲みたい場合は1合とか半合とか量をひかえて、あとはぬる燗にするようにしましょう。