今まで腰を痛めたといってみえた方のうち、半数以上がデスクワークや運転など座業の方です。
「足は第2の心臓」ともいわれる場所でして、下半身の血液循環は足の筋肉を動かすことで保たれています。座業で歩く量が足りていないと、腰や下半身に十分新鮮な血液が運ばれなくなり、局所的な栄養不足から筋力低下を引き起こし腰を痛めたり、坐骨神経痛を発症したりしてしまいます。ですので、当院でも一日20分程度は散歩をする時間をとりなさい、と運動指導をおこなっています。
ところが、何人かに一人はその後膝に疲労を溜めてしまうということがありました。歩いたら良くなると思って頑張って歩いたためのようです…。
そういった方にどんな歩き方をしていたのかを見せてもらうと、大概大股で、足をグッと前に出して、カカトから地面について足の親指側で地面を蹴る、という動作をされています。いわゆる「ただしい歩き方」とされる歩き方ですが、この歩き方、あまり良くないようです。
どこがマズいかというと、「足を前に出して」「カカトから地面に足をつく」という所です。この歩き方をすると、
図の様に、足の各関節に大きな衝撃が加わります。衝撃に対抗するために関節回りの筋は疲労しますし、関節自体にもダメージとなります。また、大股で歩くと体幹が不安定になり、踏み込みにより前進方向のエネルギーもロスすることから長距離を歩くと疲労が大きくなります。
また、血管の走行から、前に足を踏み出す動きはあまり下半身の循環に寄与しないようです。後ろへ蹴り出す動きが大きい方が下半身の循環には良いでしょう。
こういった点から、私は下の図の様に、体の真下でカカトを地面について、後ろに大きく蹴り出す歩き方を勧めています。
この歩き方は長距離を走るマラソン選手の走り方を参考に考えました。マラソン選手は他のスポーツ選手と比べ圧倒的に走り込みの量が多いのに関節の怪我が少ないように思いました。そこで走るフォームをみていくと、図のような特徴があったのです。
カカトを体の真下につくようにすると、地面に対する衝撃は体の前につくのに比べて非常に小さくなります。また、前への踏み込みによって前進方向のエネルギーがロスされていたのも解消されます。
さらに、前進方向への推力を後ろ足の蹴り出しに依存するので、血液の送り出しに使う筋肉をよく使うようになります。
また、この歩き方をすると、足を前に出さずに後ろに足を蹴り出す都合上、仙骨に前傾する力が加わるため、背骨のアーチがはっきりして姿勢の矯正効果も見込めます。
今、自分自身も含め患者さんに試してもらっていますが、なかなか慣れるまで難しいようです。自分自身の体感としては長距離あるいても足の疲労感が軽いですし、腰痛に対しても非常によいと感じているのですが、どうでしょうか?