「頭って重いでしょ?背中が丸くて頭が前につき出る姿勢になってるから、首周りに負担がかかってるんだよ」
「わかりました!じゃぁ姿勢をよくしたら良いんですね?」
「どうやって姿勢を良くするの?」
「えっ…背筋を伸ばす…とか?」
当院でとても良くある会話なのですが、そもそも姿勢というのは何なのでしょう?
良い姿勢の定義
姿勢には「意識された姿勢」と「無意識の姿勢」があります。
「意識された姿勢」とは、緊張して背筋を伸ばす・徒競走のスタートラインで前屈みになる、といった、能動的な姿勢の変化です。「姿勢を良くしよう!」と思っている間の姿勢もこの意識された姿勢です。
一方の「無意識の姿勢」はそういった意識がない時の姿勢です。体が脱力した状態でバランスが落ち着く形が「無意識の姿勢」なのです。
「意識された姿勢」は簡単に良くできます。しかし、意識で作った姿勢はごく短時間しか維持することができません。もし意識が他に向けば、あっという間に「無意識の姿勢」に引き戻されてしまいます。
では「無意識の姿勢」を良くするにはどうすれば良いのでしょう?
「無意識の姿勢」を構成している要因は主に「体幹」と「重心」です。
体幹
体幹という言葉、とても良く使われる割に、それがどこを指すのかとても曖昧なまま使われています。実際、スポーツごとに体幹の指す範囲が異なり、ハードなコンタクトスポーツだと胴体全体と首・上腕・大腿部までを含めて体幹と言う場合があります。
では今回の場合はどこを「体幹」と言うのかといいますと…
人の胴体の骨格を見ていただくと胸には肋骨があり、股関節には骨盤があり、それぞれが骨組みとして体を支えています。ですが、その間の空間は背骨があるだけで他に何も支えがありません。しかも背骨はだるま落としのように椎骨が積み重なった構造なので、それだけではグラついて上半身を支えることができません。
この空白の場所のことを体幹と呼びます。この場所を支えているのは「コルセット筋」や「インナーマッスル」と呼ばれる腹横筋・内腹斜筋です。
これらがしっかり働くことで、骨盤から体幹までを筒状に固めることができるようになります。ここが弱いと胸が空白部に向けて落ちていくため、背中が丸まってしまいます。
重心
重心もわかっているようで良くわからない言葉ですが、これは体を垂直面で分けたときに重さが半々になるポイントのことです。
例えば、首が前に突き出ている方なら、頭の重さの分だけ重心が前に移動します。そうすると体が前に傾いて転倒してしまうので、腰を引くことで重心を後ろに戻してバランスを取ろうとします。
巻き肩も同様で、前に出てきた肩と腕の重さ分、腰を引いて重心をバランスさせようとします。
このように、重心バランスの異常を引き起こす要因があると、無意識の姿勢は崩れてしまうのです。
「無意識の姿勢」を良くするには?
もうお分かりかもしれませんが、(そしてとても悲しいことに)、無意識の姿勢を良くするには、体幹トレーニングと、肩関節・股関節をしっかり動かせる運動を地道に続けるしかありません。
具体的にはどんな運動が良いかというと、おすすめ順に
- 水泳&水中ウォーキング(両方やってください)・
- ノルディックウォーキング(ポールを使ったウォーキング)
- ピラティス
- ハイキング(不整地を歩いてください。軽い登りがあるとなおよし)
- ラジオ体操(少し昔に流行った大人のラジオ体操がおすすめ)
などです。これらはインストラクターなしでもできて、ケガのリスクが少ないので手軽に始められます。もしインストラクターの指導が受けられるなら各種ダンスやヨガ、筋トレ、ランニングなども良いでしょう。
他に、筋肉や靭帯の癒着によって重心の異常が戻らないケースも(かなり)あります。セルフケアでやるならフロッシングというゴムバンドを使った治療法がありますが、バンドで高い圧力をかけるという性質のため全ての関節・筋肉に使えるわけではありませんし、癒着部位の特定も簡単ではありません。癒着のリリースを行うことのできる治療院にかかられることをおすすめします。