前回はひざ痛のお話でした。ウォーキング、ランニングともに運動を始めたばかりの人が痛めるのはまずひざでしょう。そして次に多いのが足首まわりです。足首の痛みの原因は「プロネーション」の異常が原因に占める割合が高くなります。
足首の「プロネーション(倒れこみ)」とは?
歩き方はには人それぞれ癖がありますが、一般的とされる歩行動作では、
- 最初にかかとの外側で地面につく
- 歩行速度にあわせて接地箇所が後ろから前へ広がる。同時に内外では外から内へと接地面が広がる
- 足全面が接地すると、今度は後ろと外側から足底が地面から離れ始める。この結果、体重が拇趾の付け根に集中していく
- 拇趾の付け根で体を押し出しながら足が離れる
といった段階をたどります。この「足底の外から内に接地箇所が移動する」という動きのことをプロネーション(倒れこみ)といいます。なぜ外から内かというと、歩行/走行動作では股関節は外から内へと回転するので、それに従って重心が移動するためです。
このプロネーションは能動的に足首をひねることで起こすものではなく、それより上のヒザ・股関節の動きや、上半身を含めた重心移動をうけて受動的に起こるものです。プロネーションの異常は、全身の動かし方にエラーがあるというサインなのです。
プロネーションが大きすぎると?
大きすぎるプロネーション(オーバープロネーション)の原因は足底アーチの崩れと、股関節が内側に入り込んでいることです。
足底のアーチが崩れている
足底のアーチ(つちふまず)が崩れていると拇趾の付け根で体重を受け止めることができず、足首が内側にグシャっとつぶれるような動きになります。靴のかかとがだんだんと内側に崩れてくる方はこれに該当します。放っておくと外反母趾になっていくリスクが高いため、足底アーチをしっかりと使えるようトレーニングに取り組むことをお勧めします。
股関節が内側に入りすぎている(X脚)
股関節が内側に入っている、言い換えるとX脚傾向のあるかたもプロネーションが大きくなりがちですが、この場合は足の外側を使えずにいきなり内側から内向きに揺れることになります。見た目の特徴としては、つま先が内側を向いていて、ひざから下を外へ跳ね上げるようなけり方になります。
足底のアーチが崩れているわけではないのですが、接地からけり出しまでアーチの内側に強い力がかかり続けるため、足底筋膜炎のリスクが高くなります。つま先が内を向いた状態はブレーキ動作に適さないため、急停止したりつまづいたりした際に、体重を支え切れずに転倒したり捻挫する危険性も高いです。
また、両者に共通した問題として、ヒザが過剰に内側に入り込むため、ひざ内側に強い力がかかって鵞足炎になりやすくなります。また、ヒザにひねりの力が加わってしまうことも問題となります。さらに、アーチの頂点に接続する後脛骨筋が過剰に動くことから、足首内側のシンスプリントが起きるリスクも上がります。
プロネーションが小さすぎると?
プロネーションが小さく(アンダープロネーション)なる原因は足首の硬さと、おしりや太もも裏の筋力低下です。
足首が硬い
歩行動作の3から4では足首が90°以上曲がり、かかとが浮き上がっていきます。ところが、足首が硬く90°より曲がらないとかかとだけでなく足底全体が浮き上がってしまいます。そのためプロネーションは途中で中断されてしまい、結果として拇趾の付け根での蹴り出しができません。
本来であれば内側へと抜けていく力を足の外側だけで支えることになるため、足首外側のシンスプリントや腸脛靭帯炎などを引き起こしやすくなります。また、内側までプロネーションにしないことで足底のアーチが弱っていくことも問題です。さらに、足首が深くまがらないため、前からの力に対してヒザと足首を曲げて対抗することができません。そのため、足の指で地面をつかんで体を安定させようとする傾向が強くなり、足底が常に緊張したような状態になります。
おしりや太もも裏の筋肉が弱い(腰がおちる・O脚)
おしりや太もも裏の筋力が弱いと、骨盤を直立させることが困難になり、骨盤が後傾して股関節は外へと開いてしまいます。外に開いた股関節の上から後傾した骨盤がのしかかってロックするような形になるため、ヒザは外側を向いたままになり、足首もプロネーションしづらくなります。
足底が進行方向に対して外に向いているので、見た目上かかとの外で接地して拇趾の付け根で蹴るという形にはなるのですが、プロネーションを起こしてはいません。ヒザ・足首の向きと進行方向が食い違うためひねりの力がかかり続け、ヒザも足首も痛めやすくなります。
適切なプロネーションのためには?
プロネーションの異常の原因は多様ですが、基本的には正しい歩き方を続けることを通じて、筋力バランスや柔軟性を回復させていくことで、適切なプロネーションに収束していきます。
シューズやインソールなどで足底を支えることで痛みを緩和しようという製品もありますが、症状緩和自体には効いても、筋力バランスや柔軟性の回復の観点からするとあまりいいとは言えません。そういった製品に頼るだけでなく、鏡を使ったりスマホで撮ったりして自分の体の動かし方を客観的にチェックして修正していくべきでしょう。
とはいえ、股関節深部や足首の組織の癒着などで関節の動作が制限されていると正しいフォームをとることは困難になりますし、そうでなくても正しい歩き方を独力で習得すること自体が困難です。まずは歩行指導や問題個所のケアが可能な専門家に相談されることをおすすめします。(もちろん当院でも対応可能です)