鍼灸治療は何に効くシリーズの4回目、今回は時期に合わせて夏バテです。

今年は例年になく梅雨らしい梅雨があり、また梅雨明け後の暑さも結構なもので、かなり早くから夏バテ様の症状を訴える方が多いです。

西洋医学的に夏バテはビタミンB群の不足としてとらえられることが多いです。食欲が無くなるためそうめんや生野菜などアッサリした糖質中心の食事になりがちで結果として肉類によく含まれるビタミンB群が不足し、エネルギー代謝がうまくできなくて倦怠感を感じるようになる、という考え方です。

ですが、なぜ食欲がなくなるのでしょうか?そこの説明は実はなかったりします。

漢方からみる夏バテのメカニズム

「おしっこ」で治す熱中症???でも触れましたが、夏場は冷たい食べ物・飲み物を大量に摂取することが多く、消化管を冷やしがちになります。

冷たいものを多く摂取して消化管を冷やしますと、消化管の筋肉の熱が奪われ、働きが落ちてしまいます。これによって消化吸収能力が低下するので空腹感が生じづらくなます。

そして、食べても胃の消化運動が鈍いので多く食べられなくなったり、消化に時間にかかり胃腸への負担の大きい肉類・油ものを食べたいと思わなくなってきます。これによって結果的に正常なエネルギー代謝に必要な量の栄養素が確保できなくなってきます。

栄養が不足することで倦怠感を生じる、という思想自体は西洋医学も東洋医学も共通していますが、特定栄養素の不足に原因を求める西洋医学に対し、冷食冷飲という不摂生に原因を求めるのが東洋医学の考え方になります。

家庭でもできる夏バテ予防・治療

鍼灸治療で夏バテに対処する場合、ヘソを温灸であたためて消化管の筋肉の冷えを取ると同時に消化管の働きを亢進するツボを使います。

消化管から冷えが取れてしっかり消化運動ができるようになればおのずと食欲が沸きますので、肉類脂質などバランスの取れた食事が欲しいと思えるようになります。

 

これらの処置は家庭でも可能です。

鍼灸院でヘソの温灸をする場合は棒灸や升灸、あるいはヘソの上に塩をどっさり載せその上に大きなもぐさの山を置いて燃やす塩灸などを行いますが、つかうもぐさの量が多くどれも結構な煙が出ますので、家庭でやられるにはあまり向いていません。

ですので、家庭でヘソの温灸をされる場合はペットボトルに42~3℃ぐらいの少し熱めのお湯を入れたモノで代用されるのが良いでしょう。2~30分程度ヘソの上に置いて温めます。途中で冷めてきたらお湯を新しくしてください。

また、足のスネにある足三里と豊隆というツボには消化管の活動を促す作用があります。ヘソの温灸をしながら、もしくは温灸が終わった後にせんねん灸などでお灸をすえてください。ツボの位置はインターネットで検索すれば出てきますが、できればお近くの鍼灸院でツボをおろしてもらった方がいいでしょう。

 

また、消化管を冷やさないことも大事です。

運動後や日中外からの帰宅直後など大量に汗をかいた後は別にして、水分の摂取の仕方に気を付けましょう。冷蔵庫で冷やしたモノだけでなく、水道水であってもその温度は体温より低いですので、一時に大量摂取されますと消化管を冷やしてしまいます。

また、胃が冷えると脳は胃を温めるために全身の暖かい血液を胃の周りに集めようとします。そうすると、血液を奪われた四肢や頭部は一時的な脱水状態となり、脳へ水分を要求します。すると今度は脳は「のどが渇いた」という感覚を生じさせ、水を飲むように促します。そしてまた水を飲み胃を冷やし…という悪循環を起こします。

ですので、取り立てて汗をかいた訳では無いけど何となくのどが渇いたなー、と思う程度の時は白湯などの方が渇きが癒えやすいです。常温あるいは冷たい水を飲まれる場合は一度にコップ半分ぐらいまでにしておいてください。(一度に大量にのまなければ回数多く飲んでいただいても構いません)

 

今回ご紹介した治療・予防法は夏バテだけでなく熱中症の予防にもつながりますので、ぜひご家庭で実践していただきたいと思います。