しばらく間があきました「鍼灸治療は何に効く?」シリーズ、3回目は坐骨神経痛です。

坐骨神経痛ってお医者さんの診断名で出てくるんですが…坐骨神経痛自体は「手が痛い」「お腹が痛い」と言うのと同様に症状の一つで、病名ではありません。ですので、坐骨神経痛の発生している原因が何かというのが問題になってきます。

考えられる原因は①腰椎の器質的な異常、②筋による圧迫性、③消耗性の3つに分けられます。

腰椎の器質性と筋組織による圧迫性

椎間板ヘルニアであったり分離症・すべり症といった腰椎の器質的な異常で神経を圧迫しているケースは割と重度で、酷いものは手術するしか無いこともあります。が、軽度のモノの場合、器質異常に関係無く周囲の筋組織が凝り固まることで神経を圧迫していることが多いので、レントゲン等による器質異常がある方でも周囲の疲れを取って緩めていけば症状は消えますし、逆に、画像所見での異常がなくても脊椎周囲の筋による圧迫で起こしているケースがあります。重度の場合でも周囲組織を緩めておくと治らないまでもQOLが上がるので、手術が絶対嫌だといって定期的に通われる方もおられます。

消耗性

厄介なのは消耗性に分類されるケースです。このタイプの方の訴えを細かく聞いていると、痛みの質が神経痛の痛みと異なる場合が多く、痛さを伝えることで紹介しました引っぱり性疼痛の特徴を出している方が多いです。大殿筋や鼡径部・大腿の裏側の表面の大きな筋肉が萎えていることが大きな特徴で、深部筋に負担がかかりますので、進行すると引っぱり性疼痛以外に梨状筋症候群と言われるタイプの本来の神経痛も併発します。

臀部の筋肉を酷使されて消耗されるケース以外に、座業をされている方が発症することが非常に多いです。これは、長時間同じ姿勢で座っていることで下半身の血液循環が極端に低下するためです。

治療ですが、普段の生活の中で正しい養生法を行い、萎えた筋を休めつつ患部の循環を改善して筋を回復させることが最も大事です。鍼灸治療では鎮痛処置を行うとともに、患部の循環を改善して回復しやすい状態を作り出します。

余談ですが、この消耗性の坐骨神経痛(?)、1月後半~2月に発症される方が非常に多いです。古典医学書には冬の養生が悪いと春に足の筋が萎える病を患う、とあります。旧暦のことですので、新暦に換算しますと冬は11月~1月、春のはじまりは2月の節分です。ところが、この冬の養生というのが「日が暮れたらすぐ寝る」「外出しない」「外で運動しない」「汗をかいてはいけない」などなど、現代人には到底無理な項目が並んでおります。他に冬の養生が悪いと春に起こす病としてインフルエンザ的な症状とノロウィルス的な症状とが書かれていますが、これらもピークが2月なので書かれている事と合致します。2月に流行る病は冬に養生のできない現代人の宿命といえるのかもしれません。