朝の気温が非常に低くなっておふとんから出たくありません。毎朝主夫業がつらいです。

寒くなってくるといわゆる「カゼ症候群」に該当する方が増えてきます。近所のお医者さんでもインフルエンザの予防接種がはじまっていました。今日の話は、そのカゼの兆候のひとつである「さむけ」の話。実は「さむけ」には2つ種類があるのをご存じですか?

おかん

おかん、といっても関西弁でいうところの母親のことではありません。「悪寒」と書く方のおかんです。

悪寒」という字を漢文読みすると「寒サヲ悪(にく)ム」と読みます。背中がゾクゾクとしてやたら寒がる状態のことです。

通常はさむけと言えばこの悪寒のことを指します。

おふう

一方もうひとつのさむけである「おふう」、「悪風」と書きますが、これは漢方家・鍼灸家以外の人にはほとんど馴染みのない言葉です。

これは「風ヲ悪ム」状態ですので、風に当たるとゾクゾクと嫌な感じがする状態です。

これは悪寒とは異なり、風が当たっていない状態では特にゾクゾクとした様な感じは有りません。ところがたとえ温風であっても風が当たるとゾクゾクとします。

悪風を起こしている方の特徴としては、常に皮膚がジトーっと湿っていることです。汗腺が開きっぱなしの状態なので温冷問わず風に当たるとゾクゾクとすごく気持ち悪く感じます。

悪寒悪風の違い

この二つのさむけの区別、現代医学では意識されていませんが、漢方ではとても大事です。

悪寒の場合、葛根湯・麻黄湯といった発汗剤に分類される漢方薬も用い、体を温め汗をかかせて治します。「生姜湯飲んで布団で寝てたらカゼが治った」というのもこの考え方によるものです。また鍼灸治療でも体を温め汗をかかせる様なツボを選んで手当をします。

一方悪風の場合、ただでさえ汗がジワジワと止まらない状態なのに発汗剤を服用すると汗のかきすぎで体力が急激に奪われグッタリしてしまいます。悪風している方には発汗剤は禁忌です。

汗がジワジワ出るのは汗腺を閉じるのに必要なエネルギーが不足した状態です。漢方では汗腺の開閉がキチンと出来ていることが免疫機構が正常に働いていることを判断する指標の一つとしています。悪風するときに服用する桂枝湯という薬は、エネルギー不足を補って体をあたため、かつ過剰な発汗を抑える処方となっています。鍼灸治療も桂枝湯の処方に準じてツボを選びます。

 

漢方薬は副作用が無いと言われたりしますが、実は禁忌が多いのです。悪寒悪風の違いは知っていれば誰にでも簡単に禁忌の判断ができる症候ですので、カゼの初期のお薬選びにお役立てください。