どういう訳か肩コリでお医者さんへ行ったという話をほぼ聞きません。肩コリといえばマッサージや鍼灸が定番です。

とはいっても、まず自分で揉んだりストレッチしたりしてみて、ダメならクイックマッサージや整骨院の電気治療、それでもダメなら整体やカイロや磁気ネックレス・磁気枕なども試し、そこまでしてもダメなら清水の舞台から飛び降りるつもりでおそるおそる鍼屋ののれんをくぐる…というのが大体の所だと思います。鍼って言葉だけで怖いですもんね。

重い肩コリの方は鍼灸院に来られるまでにあちらこちらで揉んだり叩いたり引っ張ったり電気あてたりされてこられますので、最後は鍼でブス—ッ!っと強烈な刺激を、なんて考えておられる方がほとんどです。

ところが、そういう方の肩を触ると肩凝りでガチガチという訳ではなく、筋肉の質自体は柔らかかったりします。酷い肩になると筋肉が萎えているケースもあります。「マッサージ屋で揉み堪えのない肩だと言われませんでしたか?」と聞くと大抵そうだとおっしゃいます。

肩凝りの原因は色々で、筋肉の使いすぎで疲労が溜まっているケース以外にも、風邪の症状として現れるケース、血虚といわれる消耗状態の症状で眼精疲労などと一緒に現れるケース、心労や睡眠不足で精神が休まらないことからくるケース、交感神経の興奮が収まりにくい状態から来るケース、胃腸の不良から来るケース、局所的な筋肉の萎縮から来るケース、横隔膜が動いていないため胸郭を圧迫してるなどなど「肩コリが治せたら鍼灸師として一人前」といわれるほど鑑別も治療も多彩です。

ですので、治療も「ブス—っと肩に鍼を突き刺す」みたいな治療はあまりやりません(それで治るタイプの肩凝りの方は揉めば治りますので滅多に鍼灸院には見えません)。原因が体のどこにあるかを見極めて、全身を調整していくことで肩凝りを起こしている元締めにアプローチしていきます。

なお、肩への強刺激を期待されてお越しになるのにそういった手当はほぼしないため、治療中に怪訝な顔をされることが多いのが目下の悩みではあります。